知っておきたい日本のお金事情

政策
<国家予算>
  • BS:資産700兆円、債務1400兆円、差額(=債務超過相当)700兆円
  • PL:年間の歳入(収入相応)80兆円、歳出(支出相当)110兆円、差分30兆円は公債発行にて調達
  • 累積債務のGDP比は250%で世界一
  • プライマリーバランス(PB:年間の国債償還・利払を除いた損益相当)は過去30年赤字 → 債務残高は拡大傾向
  • 健全化ためには地道にPBをプラスにして債務超過を解消する
  • PBプラスの国は1/3程度あり、少なくともそのレベルには持っていく必要
<一国経済>
  • BS:資産1京2500兆円、負債8500兆円、正味資産4000兆円で超リッチ
<その他公共サービス>
  • 国家予算と別に社会保障費は130兆円の年間収支、250兆円規模の積立運用
  • 公共インフラは数十兆円の資産を元に数兆〜十数兆円の市場規模でサービス

青のアンダーラインは、ファクトの中で重要なポイントをマークします。
赤のアンダーラインは、意見の中で重要なポイントをマークします。

プロローグ

1990年以降は社会主義国との冷戦が終結、中国やベトナムにおいても市場経済が導入され、こと経済においては資本主義的な側面が支配的になっています。そうした世の中においては共同体運営においても財務的な観点を無視できません。というかかなり重要です。

国家という共同体運営にあたっても、サステナビリティな形としては歳入(収入)と歳出(支出)がバランスしている必要があります。この点、日本のお金の状況は30年に渡り赤字、大幅な債務超過状態です。この債務超過は公債(国債&地方債)の発行にて補填していますが、いつか誰も買ってくれなくなると破綻/倒産(国の場合デフォルトという)になってしまいます。

日本は課題先進国といわれていますが、社会福祉やインフラの課題など個々の歪みの結果がこの財政状況に表れているともいえます。この課題を解決する方法は、端的に言えば各公共サービスの収支をトータルで均衡させることです。それには国民にとってはサービス低下として不都合なことも当然あります。ただ、これは必要なことです。「国の存続は必要だ、ただ私に影響しない部分でなんとかしてくれ」は無理ですので、どのような形でバランスさせていくか皆で考えていく必要があります。

現在の財政状況

財務状況の実態を把握するには、企業の場合は、損益計算書(PL:Profit & Loss)、貸借対照表(BS:Balance Sheet)、加えてキャッシュフローなどを用いることが多いです。

自治体の場合は、財政と言い、ある一定期間の収支を表す損益計算書に相当するものとして財政収支があり、貸借対照表はほぼ同じですが資本の部がないです。

財政収支(PL相当)

令和6年度一般会計予算 歳出・歳入の構成, 財務省(2024)

財政収支は年間のインアウトを見ます。上記は実績ではなく予算であり企業の開示情報としては見通しに相当します。会計上は収入と支出ですが、国の場合は歳入と歳出と言います。一年の計画は、一般会計と補正予算という形で確定します。毎年多少前後しますが、だいたい以下のスケールです。

国の収入に相当する歳入は税金+その他収入です。年間80兆円あります。一方で支出は110兆円です。差額は公債を発行して補填しています。

人口をざっくり1億人とすると、国民一人当たり、税金を80万円収め、110万円のサービスを受けているということです。税額などは実際自分が納めている金額に比べて大きめに見えるところがあるかと思いますが、ここは消費税、酒税、揮発油税など金銭消費時に支払う金額と法人が払っている部分も含まれているためです。110万円のサービスを受けているかも感覚としていかがでしょうかね?社会保障(37万円分)は高齢者に多めに、防衛(8万円分)や道路(6万円分)の整備など金銭価値に換算しにくいところもあるので実感として感じにくいですが、これが現状になります。

プライマリーバランス(PB)

日本の財政関係資料, 令和5年10月, 財務省

財政収支の健全性を見る上で、企業会計にはない1つ特有の概念があります。基礎的財政収支、プライマリーバランス(PB)と呼ばれるものです。どの国も自己資本がないため政策実行においては借金先行になります。本来であればその借金の元本返済、利払いも含めて黒字化を目指したいところですが、そこに至るまでに、まず一旦、当年の経費を当年の税収で賄うという状態に持っていくことが重要です。それがPB均衡の状態で、財政改善のファーストステップになります。

他国の中では、そのステップはクリアしている国もありますが、日本はまずは恒常的なPB均衡を目指すことになります。

貸借対照表(BS)

日本の財政関係資料, 令和5年10月, 財務省

貸借対照表(BS)は、特定時点における資産及び負債の残高を表します。損益計算書(PL)が年間の成績(収支)を表すのに対して、BSはそれらの経年での積み重ねの結果を表しているといえます。日本の経年の成績は、絶賛赤字続きですので、当然債務超過の状態です。

また、会社など法人と違う点は主体の自己資本がないところです。その点で、運営者(政府)に裁量がないのとともに、一方で無責任になりがちとも言えます。この部分は仕方がないのか、何かしら工夫の余地があるのかいずれ深掘りしてみたいところです。

内訳を見ると、資産の部としては700兆円強のうち、200兆円が道路、施設などの有形資産(表中 資産⑤)、100兆円弱が出資金(公共性のある法人への出資、資産⑤)、他金融資産(資産②〜④)は目的別で特定負債と対応しており基本的に自由な使途に使えません。

負債の部は、1400兆円のうち300兆円が使途が限定された預り金等です。残り1100兆が国債で、うち300兆円は公共資産整備目的の建設国債として管理会計上別枠として管理されています。毎年の赤字は、この国債残高の増大によりバランスされます。今後拡大が続くと、いずれ新規発行国債に価格がつかないなどの事態が発生する可能性があります。そうならないためにも、毎年のPLを改善し、この1100兆円の国債を増やさない、減らしていく道筋を立てることが急務です。

既発債の利払い、償還などで不渡が出ると国家破綻(デフォルト)と捉えられます。ただ、日本の資産には換金性のある資産が(法律において使途の制限があるとは言え)500兆円程度ある(有形固定資産以外)ので、国家破綻の前には、それら処分が先にされていくでしょう。その資産の中には、公共性の高い会社への出資金や、円借款における外国政府への貸付なども含まれるため、外国政府・国内外一般企業への影響も大きいです。そういった意味で日本の破綻は企業や海外の国家も困る状態といえます。

このBSのイメージとして、、、人口をざっくり1億人とすると、一人当たり500万円分の金融資産、200万円分の有形資産を持つ一方で、負債が1400万円ある状態となります。4人家族では、世帯としてこの4倍です。終わりだ、、、と思わないように、まずはこの状態を認識し、危機感を感じ、各種政策のバランスをとり黒字を目指していく。各個人としては、そうした大きな目線で判断していくとともに、無駄なサービス利用をしない(ちょっとした事で病院に行くとか)意識が重要です。共同体との距離が遠く見えるためか、公共サービスは使えば使うほど得といった見方が見受けられますが搾取の対象と考えてはいけません。家計の無駄使いを止めるように、全員が、国家のお金の無駄使いを止めていく意識が必要です。

他国はどうなのか?

参考までに日本以外の国ではどうなのか?人口の違いや先進国、後進国など国の経済規模が異なるので、絶対値としての比較はできません。1つの見方としてGDP対比があります。

累積債務残高, 対GDP

各国の累積債務残高のGDP比を示したものです。これは財務諸表におけるバランスシートの負債に相当する金額を国内総生産(GDP)で割った値になります。例えば日本は、GDPが4.2兆ドル(600兆円)、一方政府債務は1400兆円で220%強で濃いグリーンに分類されます。当然少ないほうがよいですが25%未満であるカーキ色は限られています。

本来は純資産で見るべきともいえますが、国の資産は先述の通り道路など換金できないものも含まれるので、この負債額だけで見られることが多いです。

General Government Debt, % of GDP, IMF

では、このカーキで相対的に優秀な国はどこでしょうか?

カスピ海周辺のロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、グレーのNo Dataになっていますが、アゼルバイジャンとアラビア半島のサウジアラビア、クエートあたりも低めです。これらの国はオイルマネーの恩恵を受けています。歳出のある程度を、国営石油会社の収益でカバーしているといえますが、日本には資源はないのでこれらの国の構造を真似ることは難しいでしょう。

ロシア隣接のエストニアも17%でカーキです。エストニアはソ連崩壊から自立する際にソ連当時の国際分業による産業の偏り、低人口密度、無資源といった不利な状況に危機感を感じ、行政、産業への徹底的なIT活用、小さな国家運営を目指しました。小さな国家としてサービス内容はあまり充実していない可能性がありますが、債務比率の点では非常に優秀です。日本でもマイナンバーを導入し、デジタル政府を目指していますが、このエストニアも参考にしています。国民統制につながる〜、セキュリティが〜、などの不安面で国民のウケが悪く全然浸透していませんが、効率的な行政移行へ繋がる手段であり、メリットを認識し一緒に推進、活用してもいいのでは?と思います。

ちなみにアフリカ中央部のコンゴもカーキですが、年35%のハイパーインフレにより圧縮が進んだようです。これは正攻法ではないですが、債務の大幅な圧縮に有効で日本も過去使ったことがあります。それについては後述します。

プライマリーバランス, 対GDP

各国の2022年のプライマリバランス(基礎的財政収支、事業会社のPLに相当)の対GDPを示したものです。青系色はプラスで、前項の累積債務を減らす方向で頑張れている国です。赤系色はマイナスで逆に増加させているイマイチな国です。日本は、絶賛−5.43%で濃い赤です。ちなみに過去30年ずっと赤です。その前昭和62年〜平成2年にかけては一時期プラスだった時期がある点は補足しておきます。

Government primary balance, percent of GDP, 2022, IMF

このプライマリーバランスに関しては、プラスの国がかなりあります。実際青が50カ国程度、赤が100カ国程度になります。日本は債務残高のGDP比率が世界一の国ですので、PBの改善は他国よりも強く求められる状況であり、少なくともこれは青に持っていく必要があります。

日本の国債のレーティングは、2000年まではAAAクラスでしたが、その後段階的に引き下げられ2015年からはAクラスです。ドイツはAAAクラス、アメリカ、イギリス、フランスはAAクラスでそれらの国に対して劣後、信用度は確実に低下しています。この先も改善の兆しが見られないとなるとさらに引き下げられる可能性があります。人気が落ちると、買い手を集めるために金利を高めに設定する必要があり、既発債は価格下落、いずれ新たな調達が困難になってしまいます。やはり、地道に改善する意思を示し、実行に移していくことが重要です。

過去の推移

こちらは日本の累積債務残高の対GDPの推移になります。数字は小さいほうが健全で、先の産油国などはこの値が25%以下だったりするのですが、日本は250%と非常に大きな値です。特に平成2年のバブル崩壊あたりから経済の再活性化を目指して金融緩和、財政出動という形で大きく上昇しています。

日本の財政関係資料, 令和5年10月, 財務省

さらにその前を見ると、、、線が繋がっておらず、200%から50%に大幅に下がっている部分があります。国家が破綻し円が暴落するとこれと同じようなことが起こる可能性があります。

それは、、、

ハイパーインフレ

です。第二次世界大戦後の混乱で起こりました。期間をどこで取るかで計測値に違いがあるようですが70〜220倍のハイパーインフレを起こし、結果的に政府の債務残高は大幅に低下しました。ハイパーインフレは、極度なインフレ=お金の価値が急激に下がることですが、実体経済はインフレヘッジの性質がありGDPの減少幅はお金の価値の減少幅よりも小さくなります。その結果、累積債務対GDPは減少します。コンゴでは今これが起こっています。ただインフレ率は年35%程度で、戦後日本の100倍スケール(パーセンテージ表記で10,000%)に比べたらまだ緩やかです。

100倍規模のハイパーインフレというのはどういうものか、、、今起こると、ジュース1本が150円から15,000円になります。電車の初乗りは200円から20,000円になります。期間により率は変わりますが仮に1年で100倍とする場合、定率でインフレが進むと仮定すると1日あたりの上昇率は1.27%になります。日に日に目に見えて価格が上がっていく、購買力が低下していく、、、小さく見えますか???複利でかかるため、10日で13%、1ヶ月で46%上昇します。誰もがお金を手放しモノに変えたがるでしょう。需要の高まりが、価格の上昇というスパイラルを繰り返し、さらなるインフレに繋がります。不要にモノが確保され物流が停止します。2011年の東日本大震災後の関東・東北圏でのモノの不足や、コロナ直後のマスクの値段の高騰のようなことが長期に渡り社会全体で起こります。

老後2,000万円問題に対して現金相当にて準備していた方は残念、ハイパーインフレ後の購買力は20万円相当まで低下します。1ヶ月程度で使い切ってしまうでしょう。こうした可能性のためにも資産の一部は、インフレヘッジのある実物資産、株式などへ配分、外貨建て資産として保有しておくべくのがベターでしょう。

このハイパーインフレは財政だけでみたら借金の圧縮になりウェルカムです。とはいえ、財政健全化に向けて戦略的に取りうる手段と言えるのか???かなりの混乱で、経済もスムーズに流れません、モノの不足で辛い時期を過ごすことになるでしょう。一時的に債務残高は大幅に圧縮/チャラにできますが、収支バランスの見直しがなされないのであれば、その後また赤字が続き、債務残高は上昇し根本解決になりません。先のグラフも急上昇の右肩上がりが2つ並んでいます。その点でも、きちんと年間収支を改善し、黒字化し、累積債務の解消を目指すことが重要といえます。

一国経済

ちなみに、国の財政は上記の通りで負債額も相当大きいといえますが、(法人を含む)日本国民全体の貸借対照表は以下のとおりです。

令和4年末の期末貸借対照表, 2022年度(令和4年度)国民経済計算年次推計, 内閣府経済社会総合研究所(2024)

総資産は1京2,500兆円、負債が8,500兆円、正味資産(資産-負債、純資産相当)は4,000兆円(うち家計2,800兆円)であり健全と言えます。一人当たり純資産として4,000万円(家計の範囲で2,800万円)でやはり日本はリッチです。日本に生まれた私たちは本当にラッキーです。そして経年でこの純資産は増加しています。富の偏りがあり、法人の持分・内部留保になっている部分もあるので、大半の方はこんなにないよと思うでしょうが、平均的にはこの位あるということです。

こうした民間のストックをうまく活用し、国富を増やし、その中で税収を得て再分配に回すなど、活用ネタとして大きなポテンシャルになります。

実際、表中にも現れている現預金が2,300兆円あることが一つ注目されています。この寝ているお金を投資に回し、国民全体が投資家となりより大きな収益を獲得する誘導政策が進められています。それがNISAでありひとつの活用事例といえます。

日本の将来に向けてはいろいろとネガティブな情報が多いですが、一国経済としてみればまだまだ魅力的といえます。これを根拠に先の財政収支のマイナスを軽視してはいけませんが、こうしたストックがあることは、日本という共同体をいい方向に持っていく政策に使える可能性があります。

自身では何も付加価値は生まないが、そうした企業・事業に投資し分配を受ける、、、資本主義がより一層進む中で、資本家は一定の役割を担っています。では、そうした国があっても、、、それが産業が成熟しストックが溜まっている国の役割となりうるのであるならば考えてみるのはありでしょう。

国家予算以外の公共サービス

前項までは、国(地方)の収支に関する範囲を見てきましたが、公共サービスの中には、政府予算の外側で管理されているものがあります。

社会保障費

まずは、年金保険、医療保険、介護保険などに関わる社会保障分野です。給与所得者は、所得税とは別に保険料として源泉徴収されているかと思います。それ以外の人は、健康保険、国民年金として加入が義務付けられています、源泉徴収されませんがちゃんと納付していますよね???

国立社会保障・人口問題研究所「令和3年度社会保障費用統計」、令和5年度の値は厚生労働省(予算ベース)

↑の左側が給付額の推移ですが、高齢化による医療費、年金受給者の増大により給付費が年々拡大しています。右側が財源ですが保険料の77.5兆円では全然足りず、53.2兆円が公費負担です。そのうち36.7兆円が税収入+国債発行として、先の一般会計から割り当てられています。

日本の年金制度は、特定時点での労働者からの保険料収入を元にその時の給付にそのまま横流しする「賦課方式」をとっています。給付との差額を賄うためにGPIFという年金ファンドが2001年に設立され、そこでの投資収益を資産収入という形で補填しています。運用資産は250兆円で世界屈指の運用額ではありますが、上記の通り毎年130兆円スケールでイン・アウトがある社会保障分野において、給付拡大をカバーしていくほどの規模ではありません。GPIFは2001年から運用開始しており、昨今の市況のよさもありますが期間トータル年率4%で運用できており優秀といえます。

本来保険は、確率は低いが起こった時に高額となる事象へのリスクヘッジに有効な手段です。年金保険は、1944年の設立当初は平均寿命が50歳前後だった当時に、長生きするリスクに対しての保険で、受給年齢は55歳に設定されていました。受給者は平均以上に長生きした人で少数でありその意味で保険の形でした。この点現在はどうでしょう、平均寿命が85歳に対して65歳から受給される、、、これはほとんどの人が給付を受ける形で保険として立ち行かないのは明白です。さらに高齢化で納付者以上に受給者が増加する状況です。GPIFの資産収入でもこのペースでの給付増大をカバーするのは不可能であり、抜本的な仕組みの見直しが必要です。

民間による公共セクター

公共サービスは民間によるものもあります。民間だから企業努力で解決させればいいとも言い切れません。人口減少など人口動態等の変化によるビジネス環境の悪化は価格に転嫁されます。また、採算が合わないことで撤退されて不利益を受けるのは私たち国民です。サービス供給側、需要側双方が歩み寄り環境を整備することが重要です。

また、これら産業の特徴として、非常に大きな資本(設備投資)を必要とする点があります。PLのスケールとして市場規模/売上、BSのスケールとして総資産を見ていきます。

電力

市場規模15兆円、年平均成長率(CAGR)1.1%〜3.5%です。電力10社の総資産は40兆円です。AI、ロボット、EVなどの発展により、今後より一層の需要増が見込まれます。現代社会においては経済活動においても生活においても必須のインフラであり、ガス、石油を含めたエネルギー政策は重要な要素になります。

ガス

ガスは、産業用、家庭用の小売での燃料用途のみならず、輸入ガスの半分は発電にも使われています。また家庭用は、都市ガス、プロパンガスで原材料も、事業モデルも異なります。利用者は都市ガス6割、プロパンガスが4割で地方ほどプロパンガスが多い特徴があります。

小売の範囲で市場規模は6兆弱、CAGRは判明しませんが、一方でLNG発電も同程度のボリュームがあり、電力業界の動向にも影響し合います。

大手ガス4社の総資産は8兆円になります。

水道

水道事業(生活用水)は、多くが地方自治体で運営されており、市場規模は3.2兆円になります。水道事業の採算悪化は、地方財政の悪化につながります。

生活用水においては1998年ごろをピークに緩やかに減少しています。水道管の整備は1975年あたりでそこから40年、耐用年数を迎えつつあります。事業収支としては今後の人口減少からも先細りの中で、メンテナンスコストが嵩み、厳しい状況です。さらなる環境悪化に向けては、水道網の総延長を抑えるための居住地の限定など、独立採算を維持するために抜本的な効率化が必要になる可能性があります。

総資産は、、、適当なものが見つかりませんでした。後述のダムとか考慮すると相当な資産規模になりそうな気がします。

全国の水使用量, 国土交通省水資源部作成

水使用としては、生活用水だけではなく、農業用水、工業用水なども大きなボリュームを占めます。また同一の水源を活用しているケースもあり、全体で考える必要があります。

また、それぞれ所管が、生活用水 → 自治体、農業用水 → 農林水産省、工業用水 → 済産業省・環境省で異なる点がほかインフラにはない難しさになります。さらにダムは国土交通省水管理・国土保全局の管轄です。

鉄道・バス

日本の鉄道業界の市場規模は約8兆円です。バス事業は約1兆円です。総資産は50兆円程度でしょうか。

鉄道事業は、大規模な設備投資を要し、投資回収に長い期間を要するまさにインフラ事業です。一方で大規模な地域開発に関連した事業機会は大きく、都市開発、不動産、バス事業、金融、リテールなど、沿線における利用者のライフスタイル全般に関与する多角的な事業展開により、事業ポートフォリオのバランスをとっています。

まとめ

共同体運営を考えるにあたっては、財務的な観点が必須です。ただ、財政は各種政策を行った結果であり、財務的な観点から直接改善するのは困難です。各種政策を見直す中で、最終的には全体で収支をバランスさせる必要があります。さらに、、、国家は、人間の集合、共同体として最大スケールであり、当然、収支、バランスシートとともに巨大であり、やりくりは究極の全体最適と言えます。簡単でαないですが、政策を考えるにあたっては外せない要素であり、スケールを把握し、どの程度の効果・影響なのかは意識しつつ判断することが、サステナブルな日本に向かうために必須と言えます。

で、実際のスケールですが、現状では毎年の国家予算の収支は絶賛30兆円の赤字で、累積債務残高は1400兆円にのぼります。対GDP比でみた場合は250%を超え、比率としては世界一ですが、対外債権や資産もそれなりにあり、だからと言って世界一やばいという状況ではないなく、日本国債の信用度も現状でシングルAクラスではあります。ただ、20年前はAAAクラスだったことを考えると累積債務の増加に伴い信用度が低下しているのは事実であり、やはり改善が必要です。そのためには累積債務が拡大しない状態(PB均衡)とすることがファーストステップです。ぶっ飛んだ債務圧縮の方法としてはハイパーインフレがありますが国民は辛い生活となるでしょう、持っている人はヘッジをしておきましょう。

国家予算とは別会計(一部国家予算から充当)で、社会保障費が130兆円規模の収支と250兆円の積立運用があります。

また、共同体に必要な公共サービスは国・自治体だけが運営しているわけではありません。民間だから、企業に任せておくというのは解決にならず、電気、ガス、水道、交通インフラなどいずれも数十兆円の資産を元に、数兆〜十数兆円の市場規模でサービスされており、必要に応じて方向性、環境整備を行なっていく必要があります。

本ブログに関わらず、何かしらの政策アイデアを検討する/判断する/投票する際には、こうしたスケールとそれに対する効果を一つの視点として考慮いただくとより現実的、効果的で、サステナブルな日本というゴールからブレない意思決定になるかと思います。

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