2050年の社会からバックキャストで考える

インフラ政策
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日本は課題先進国と呼ばれる通り、難易度の高い課題が山積みです。それら課題に対して全部は対応してられないし、闇雲に進めるのも効率が悪いです。その優先度を推し量るアプローチとして、一定の予算規模の領域で高い改善効果を狙う方法が考えられますが、それとは別にもう1つ、2050年の社会を想像し、そこに向けてどういった準備、対応が必要なのか、バックキャストで考えることも有効かと思います。

タイトルでは便宜上キリのいい2050年としていますが、あくまで今から見渡せる未来・方向を想像することを目的としており、以下に挙げた内容が実際に2050年までに実現するかどうかは論点としていない点はあらかじめご認識ください。

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産業・経済

世界的にSDGs、ESGが謳われ環境問題への意識が向かいつつあり、一時期の「金の亡者感」は若干低下していますが、500年続いた資本主義の側面はなくならないでしょう。ただ、資本家と労働者の関係、総数は今とは違ったものになると推察されます。それは、AI・ロボットの導入が進み、作業労働はロボットに、ルール、マニュアル化できるような労働はAIに置き換えが進むでしょう。それらは人件費に比べて安く済むでしょうし、文句も言わないし、すでに徐々に導入が進んでいています。最終的には少数の会社が大きな資本を使って、少ない従業員とたくさんのロボットAIを使ってサービスを提供する形になると思われます。大きな資本を集めるため、株主(資本家)数は増えるかもしれません。一方で、企業に所属する労働者は大幅に減るでしょう。

ロボットというのはドラえもんやアンドロイドのような人型ロボットではありません。コントロール可能な機械をベースとし、コントロールはAIによる学習、自己判断が組み込まれていくでしょう。分かりやすい例は、車のロボット化で、自動運転になり、交通ルールを認識し、目的地まで勝手に行きます。バスやタクシーも無人化、トラックも無人化されます。ついでに、物流倉庫での仕分け、積み替えなども自動化されたラインやフォークリフトに移行するでしょう。飲食店などでの調理、給仕も、いずれ農業のような難易度の高い作業もロボットに置き換わります。警察の見回りもカメラ、ドローンといった機械になります。

デスクワークはAIに置き換わります。法律に関わる部分では、AIが契約書を作成、契約当事者の意向を組み込む調整、締結も電子的に行われ、各種法令の変更も即時対応でしょう。個人法人問わず、お金の管理・会計は、仕分け、決算書の作成、税務処理、そこからの家計診断/経営判断などもAIが担当するようになるでしょう。パチンコのしすぎをAIが咎め、決済を停止するような機能もできるかもです。士業の多くが置き換わるというのはこうした部分です。医療では、画像、血液などの計測は機械が行い、その情報をもとにAIが病理診断を行い、手術が必要になった際もロボットが行うことになるでしょう。ロボットでは可視光以外の視界が使え、人間よりも圧倒的に精密な動作により、人間には不可能な術式も可能になるでしょう。しかも、ネットワークを介し、各ロボットの経験を共有し、常に最新の治療対応に自動アップデートされるでしょう。人は敵わないです。そして、それらの仕事はなくなります。

近い将来には、誰もが自分をよく知った専属のアシスタント、コンサルタント、法律家、医師などの専門家を抱えるような感じです。それが携帯や腕時計のような機器で、口頭ベースで依頼でき、生体情報から健康へのアドバイスもうけられるでしょう。

労働環境

そうした社会では、明らかに人の役割が低下します。先の例以外にも、パイロット、学校の先生、掃除、設備メンテナンスなども人間がやる必要はなくなります。人間の数に対して仕事の総量が圧倒的に減ります

ではその時は、一部のAI・ロボットを製造、コントロールする法人で富を独占し、それ以外の大多数の人は職安に向かうのでしょうか?それでは社会が成り立ちません。労働は国民の3大義務から外れることになるでしょう。そうした共同体メンバー(しかも、大多数)に対して人間らしい最低限の生活を保証する再分配の仕組みが必須になります。そして、「最低限の生活」は、今の生活保護のレベルではなく、余暇なども十分楽しめる一般家庭レベルになるでしょう。仕組みとしては幾らかの方法が考えられますが、現在の資本主義からの移行の点、個人の嗜好での選択余地を残す点においてもベーシックインカムが最適でしょう。

人間は、種として確立してから縄文・弥生時代までの長い期間、力が強いことが生きる上で有利でした。その後文明が発達して現在に至るまでは高い知能を持つことが有利になりました。今後、AIのバックアップにより知能の差は小さくなります。労働から解放された後の社会がどうなるのか?全人類にとって経済面を含めた不安がなくなり、競争が不要な社会が実現されるのであれば、それはいよいよユートピアの実現と言えるかもです。

より死なない世の中に・・・

日本における死因順位(2022年)は以下の通りです。

順位 死因 割合 Remarks
1 悪性新生物 <腫瘍> 24.6% 癌。大腸、肺が多い
2 心疾患 (高血圧性を除く) 14.8%
3 老衰 11.4%
4 脳血管疾患 6.8%
5 肺炎 4.7%
6 誤嚥性肺炎 3.6%
7 不慮の事故 2.8% 窒息、交通事故、溺⽔の順。10代以降は交通事故が最大
8 腎不全 2.0%
9 アルツハイマー病 1.6%
10 血管性及び詳細不明の認知症 1.6%
その他 26.1%

3位の老衰はハッピー、7位の不慮の事故以外は病気が占めます。年代別では、20〜40代においては自殺の割合が上位に入ってくることは表には表れていませんがポイントになります。

1位は癌で死因の1/4を占めます。癌は細胞の突然変異で起こり厄介です。癌の死亡率は年々上がっていますが、長寿命化の結果とも捉えられるでしょうか。癌細胞は無限増殖により臓器の機能不全につながりますが、一方で、体細胞の初期化により作られるIPS細胞と共通点も多いようで、良し悪しです。とはいえ医療全般、AI・ロボットにより病理診断、治療精度は向上が見込まれます。

そして、7位の交通事故に関しては、高齢化の進行に伴い認知能力、運動能力の低下に起因した事故が目立つようになりました。今後アシスト、自動化されることで事故率は低下するでしょう。

そして、最低限の保証がなされることで、生活の困難さも低減されます。若年〜壮年期に見られる自殺の中には一定割合の生活苦、将来不安を原因にしたケースが含まれると思われますが、それらは減少するでしょう。(一方で、生きる意義、目的をどう見出すか、という点は新たな自殺の原因となる可能性はあります。)

ロボット・AIによる産業構造の変化、それに伴う労働環境の変化は、より死なない社会に向かうポテンシャルがあります。

今の閉塞感は、すでに労働環境が変化している影響???

先進国においては資本家と労働者の間、労働者の中でも二極化が進んでいます。すでに単純作業の多くは無人化が進み、求人が、難易度の高いものと、待遇、労働環境として人気のないものに偏っているようにも見えます。

残った求人に納得がいかない、本人のスキルに合ったやりがいのある労働が減っていることが、NEETの増加、特殊詐欺のような不法活動の増加に少なからず影響している気もします。これは若者のやる気だけの話ではなく、社会構造・労働環境の変化の影響ともいえます。また、世界的な出生率の低下は、自身の苦労から子どもへのフォロー(教育、経験)を多めに、量から質への転換とも考えられます。

政治

人間の共同体の大きさとしては、家族、企業、自治体、国家になる程大きくなり、その中で共同体としての意思決定、富の分配・再分配を進めるに当たり、扱うべき要素(データ)は多くなります。一方で人間(の集団)のキャパは限られているため、特に国政レベルになるとどんな政治制度を取っても、検討は部分最適にとどまります。見る視点により、前提の不備、アプローチが的外れ、優先度が違う、加えて整合性を意識しすぎると意思決定が遅い、、、これらは人間のボトルネックであり、仕方のないことです。こうした業務はコンピューターが得意です。コンピューターのすごいところは、人間が処理できる量よりも圧倒的に多い量を、高速に、24時間働くことが可能なことです国家運営もAIへ任せていくのが合理的です。

ついでに言及すると、そうしてAIが人間が及びつかない部分まで考慮して出した結果に対して、人間が再評価、関与することに意味があるでしょうか?専門家が複数人で議論した結果に対して、何も知らない小学生が評価するようなものです。最終的に行政は、AIに現状と要望をデータを投入する役割になるでしょう。意思決定として国民の投票による民主主義は意味をなさなくなる可能性があります。そもそも民主主義自体、納得感は醸成できるでしょうが、効率的な意思決定手段とはいえない手法でもあります。民主主義の是非に関しては<別途>。

産業のAI・ロボットへの置き換えは進みますが、付加価値生産の総量自体は変わりません。その価値の利潤が、労働者への所得に回らずに法人に残るだけですので、税率が同等であれば、所得税で徴収していた部分が、法人税に置き換わる形で税収の総量には大きく変わりません

その点、税構造は大きく変える必要はありませんが、今現在、歳出が歳入を大幅に上回っている点は、各政策の中で改善していく必要があります。

社会保障制度

社会保障=年金は、働く前提の世の中で、肉体・精神面の衰えなどで長生きした時に働けなくなるリスクに対しての保険の意味合いで作られたものです。働くことが前提にならなくなる世の中になるので、位置付けが変わります。年齢問わず、働かない、働けない人に対してベーシックインカムの導入が必要になり、そのベーシックインカム制度は、年金制度・失業保険制度のアップデートで構築することになるでしょう。

医療保険は、現行踏襲です。

環境

AI、ロボットはエネルギーを必要とします。今人類が扱っているエネルギーとしては電気エネルギーがポータビリティ、安全面、現在からの移行を考慮しても引き続き最適でしょう。先のようにAI(物理的な機器としてはコンピューターベース)、ロボットの利用が増えることで電気エネルギーの消費量が大幅に増大します。今のエネルギー効率のままという前提の中では4倍程度増加するらしいです。自動車もEVの割合が増えることも電気の需要増につながります。

ということで、電気の重要度がより一層高まります。国際関係を考えると、エネルギー政策は安全保障の観点も意識しておく必要があります。

現状の発電効率は50%程度で、残りは熱エネルギーになります。熱はいくらかはコージェネなどで有効利用することもできますが、使いきれない可能性が高いです。地球全体で熱が溜まることは大きな問題になるでしょう。宇宙への放射の仕組みなどが必要になります。

人口

人口は減少が見込まれています。2050年の人口は、9500万人と、今の3/4になると推計されています。その時私は後期高齢者に入りかけ、若者にお世話になっているのか、上記の社会形態にすでに移行が済んでいるのか、この記事を見返すのが楽しみです。

治安・消防・医療といった行政サービスや、電気・ガス・水道・道路・鉄道など社会インフラのコストは地理特性、人口密度に関係するものが多いです。人口の減少は人口密度の低下であり、社会インフラコストの増大につながります。効率的でエコな社会に向けては、積極的に人口の高密度化を進めていくことが望ましいと言えます。今後は人口減少を見越した居住地域の整理なども進めていく必要があります。

国際関係

産業革命、インターネット革命に続くイノベーションの影響で、世界的に二極化が進み、不満が溜まり、先行きが不透明になる中で、より閉塞的、うち向きの思考が広がりつつあります。アメリカファーストのトランプ政権、イギリスのEU離脱、力をつけてきた中国は、アメリカに対抗すべくアジア、アフリカの第三勢力との関係を強めています。俯瞰してみて、世の中の流れは、国際協調よりも自国優先の保守的な方向に向かっているといえます。

宗教・民族

宗教は人々の不安の拠り所、分からないことの解釈を起源としています。科学が進歩し分からないことが減り、生活が安定した先進国においては、信仰心の低下が見られます。とはいえ、依然として宗教国家も多く、宗教により団結している国家・民族は一定数存在します。グローバル化に伴い、各国成長が進んでいく中で徐々に宗教色は低下していくとは思いますが配慮は必要です。

その中で日本は特に信仰心が低いです。比較的温暖な気候で、侵略を受けにくい島国だった影響があるでしょう。お墓はお寺(仏教)にあるけど、クリスマスを祝って(キリスト教)、年末年始、お祭りの際には神社に行く(神道)という方も多いでしょう。それはもはや、信仰というより、文化的側面の方が強いです。ついでにうちには、インド旅行の記念で購入したガネーシャの額縁(ヒンズー教)もあります。

ユダヤ教は単一民族の選民思想がやっかいです。イスラム教はジハードの規定が一部の過激な宗派につながっています。経済方向では、毎日の5回のお祈り、ラマダンの影響は無視できません。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教は同一の神を信仰しており仲が悪いです。ヒンズー教はほかの宗教を全て取り込み、整合を取ろうとしたことでカオスですね。また、カーストの厳しい階級社会は、基本的人権、平等の観点から問題です。

宗教は、国家、民族の団結、統制手段として一定の効果がありますが、一方で国家間の争いの原因にもなっています。平和に向けては、今の日本のように文化、祭としての位置付け位がちょうどいいのかもしれません。

まとめ

以上、ちょっと先の世界を想像してみた中で、現在の流れの中で確からしい部分と、それに関連して、対応しなければいけないけどまだまだという課題が見えてきました

産業・行政は、AI、ロボットの活用により最終的に人間の役割は大幅に低下するでしょう。また世界的な出生率の低下、関連した人口減少、高齢化も確実です。先の自動化は、高齢化社会を助けることに繋がり方向性として整合します。人口密度の低下は生活インフラコストの効率低下につながりますので、居住地の高密度化、サービス提供エリアの限定が望ましいでしょう。また、AI、ロボットの活用は、動力である電力エネルギーの消費量は増加します。国際関係は、どちらかというと内向きで安全保障の観点も意識しておく必要があります。

そのほかには、空飛ぶ車とかもあるかもしれませんが、生活の基本をひっくり返すようなインパクトはないでしょう。

移行プランの重要性

ただ、この移行は、ある時点で一気に移行されるわけではなく徐々に進む点が厄介です。というか、すでに移行は始まりつつあり、特に二極化などはその綻びとも言えますが、現時点においては最終形を見越した対応がなされているとは言えません。今後この傾向はさらに強まるでしょう。雇用から弾き出された人たちにより生活保護受給者は増加します。まわりでギリギリで頑張っている人たちはそれをバッシングするでしょう、社会の分断はより強まります。早期に大きなトレンドを認識し、その最終形からバックキャストで対策を進める必要があります。

労働の解放と、資本主義との両立に向けてはベーシックインカムが有効です。社会の変化が徐々に進捗することを考えると、ベーシックインカムも少額から導入していくのがいいでしょう。資本家側の人たちは再分配のスケールが上がるので、今の資本主義の評価観点からは収益性の低下となるでしょう。ただ、分配先は需要者でもあり、大多数の需要者が困窮する状態は市場として存続しえません。共同体としてのエコシステムをサステナブルとし、みんなハッピーな明るい最終系を見据え、長期的な視点で検討、対応を進めていきましょう。

終わりに

日本は一番成功した社会主義と言われています。日本人の特徴に、協調性、奥床しさがあります。現在の資本主義のルールにおけるグローバル競争の中ではネガティブに評価されがちですが、こうした共同体の実現にあたってはむしろ適しているといえます。課題先進国の解決とともに、資本主義の次の時代、AI・ロボットの活用により節度あるレベルで充足した新たな社会形態を目指すことは、資本主義のルールの中で戦うよりもゴールとして夢があり、地球にとってもよい提案になるのではないでしょうか。

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