人口減少時代のサスティナブルな社会インフラに向けて

インフラ政策
課題:人口減少 → 人口密度低下の環境下で、社会インフラが成り立たなくなりつつある。
対策:人間の居住地域(=サービス提供エリア)を限定することで人口密度を維持し、運営コストを抑え事業者の収益を確保する。
ポイント:
  • 非居住エリアを自然に帰すことで、人間以外の生態系とのより良い共存にもつながる。
  • 居住地の限定は、地域への執着、個人資産との絡みもあり実行難易度は高い。効果的かつフェアな仕組みを考える必要がある。
  • 青のアンダーラインは、ファクトの中で重要なポイントをマークします。
    赤のアンダーラインは、主張の中で重要なポイントをマークします。


    2011年以降日本の人口は減り続けています。2011年の1.278億人から2023年で1.243億人になっています。数字の比較で見るとそれほど違いはないように見えますが人数として350万人、これは自治体最大の横浜市にほぼ匹敵する人数です。

    この先2030年には1.16億人、2050年には9500万人まで減ると予測されています。人口の減少は、GDPの減少、税収の減少につながります。人口減少(少子化)に向けては、子育て支援の充実など取り組まれていますが、こちらで検討した通り現実的に解消は難しい状況です。対策はうまくいったらラッキー位と考えて人口減少を前提とした社会の仕組みを考える必要があります。

    人口密度の低さは効率性を落とす

    人口減少は、とりわけ田舎における過疎化、人口密度の減少に繋がります。人口密度が低いことの1番の問題は、社会インフラの効率を悪化させることです。最近よく、鉄道やバス路線の廃止の話題を耳にします。国土交通省の調査によると2020年度の段階で一般路線バス事業者の実に99.6%が赤字になっています。

    社会インフラには以下のようなものがあります。

    • 交通:道路、鉄道、バス、タクシー
    • 物流:宅配、郵便といったデリバリー
    • 公共:電力網、上下水道、ガス
    • 行政:消防、警察
    • 学校

    これらサービスは、国、自治体、民間と事業主体は異なりますが、国、自治体トータルとしては赤字、民間は自分の財布ではないとはいえ、採算面で撤退されサービスを受けられないとなるのは望ましくなく、国民全体でコストが掛からない方向を考える必要があります。

    公共事業の事業構造と採算維持

    これら社会インフラ事業の特徴は、提供サービスにおいて、地域の網羅性が必要となる点です。そして、地域の網羅は固定費との連動性が高いです。山の中に集落があるとそこまで道路を整備し、電柱により電気を、水道管で上下水道を整備する。そのコストは集落の人数によりません。過疎化が進んでも1人おばあちゃんが住んでいてサービスを継続する場合維持コストはそのままかかります。

    人口減少が進む中で均一に人口密度が減少すると、運営事業者の固定費は変わらず、収益だけが減ります。その場合損益分岐点は変わらないのでどこかの段階で採算を下回ります(すでに99.6%のバス事業者は下回ってきていると言える)。損益分岐点を下回らないようにするには、収益を維持するか、固定費を下げるかのどちらかです。人口減少の中で収益を維持するというのは一人当たりの支払う料金を上げるということです。これは合意できないでしょう。料金の値上げが必要なのは、電気、ガス、水道、バス、税金(道路、橋)、、、全てのサービスだからです。では、固定費を下げるにはどうしたらいいか。サービス提供範囲を限定することです。集落など一定の人口密度を下回った人には一定の人口密度を維持している地域に移ってもらうことです。

    極端な例をいえば、人口1,000人が山の中に分散しているのと、都市部の1つのタワマンに住んでいるのではどちらが効率がいいか、自明です。都市部はインフラ効率が非常に高いメリットがあるのです。非居住地(=サービスはやめる)と居住地(=サービス提供範囲)を分け、居住地は一定の人口密度を維持するような形態に誘導していく必要があります。

    居住エリア集約のメリット

    居住エリア(サービス提供エリア)を限定・集約し、誰も住まない地域を作り、その地を自然に返すことは、自然環境に生息する動植物との共生の観点でもメリットになります。環境省の推進する30by30に対しても整合があります。

    平地は面積を必要として公共サービスも水程度で済む農地として活用する発展系はありです。各国の政策が内向きに進んでおり、食料安全保障の観点で自給率アップも必要です。

    こうしたエリアの限定は多面的に見て有意義な政策といえます。

    参考:自治体による移住者の取り合いは国としては不毛

    人口減少に合わせて、インフラをダウンサイジングしていくのには、サービス提供エリアを絞り、提供エリアの人口密度を維持することが重要です。ではありますが、現在の各自治体は、、、マイナスサムの人口を取り合う不毛な争いをしています。たとえ自身の自治体が100人増やすことができても、一方で減る自治体があっては日本全体の社会インフラコストの効率の観点で見ればそれは意味がありません

    日本全体のインフラ効率を考えた場合、もっとドラスティックに居住エリアの限定に向けた誘導が必要です。日本全体で人口が減っている中で、人口の分布は国全体で考えるべき事項です。東京圏の過密を理由に、都市部から人を移動させるのであれば、人口密度を均一化してしまっては意味はありません。移動させるのであれば、地方核都市のような一定の人口密度がある場所に誘導すべきです。

    居住エリア/非居住エリア

    では居住エリア(サービス提供エリア)と非居住エリアを誰もが納得いく形で線引きするにはどうしたらいいか???誰もが平等と思えるやり方にはどういった方法が取りうるでしょうか?

    個人資産、生活を変えるという非常に影響が大きい究極の選択に対して、2つのExtremeな提案をしたいと思います。それは、、、

    案1)市街化調整区域の拡張

    自治体毎に都市計画として一定の人口密度を持つ居住地域と、1人も住まない非居住地域を設定します。非居住地域の人は、近郊の居住地域に誘導します。現在でも市街化調整区域の設定がありますが、それを人口密度により厳格化、サービス提供を考慮し整備していく案です。白地地域は建築不可にします。そして、人口減少に合わせて見直しを行います。

    そして、サービス提供はその人口密度を満たしている地域のみに提供します。

    先祖代々からの土地で、私はここから一歩も動かない、、みたいなことが予想されますが、それはわがままです。自由は、社会の仕組みの中での自由です。社会システムが崩壊しようとしている中では認めるべきではありません。交通だけ見ても、バス会社の99.6%が赤字、鉄道会社も98%が赤字です。企業努力、善意に頼れる状況ではありません。公共サービスを持続可能にするためには、事業採算が前提になります。先祖代々の土地に引き続き住みたければ、自給自足することです。水は井戸、電気は自家発電、移動も自力でどうぞ。。。どちらも嫌はわがままです。

    一方で、近年では核家族化も進み、現在の中高年は土地への固執などは少なくなってきている可能性もあります。私は生まれ故郷との縁はすでに切れています。逆に、田舎の土地家屋の処理に困っているといった事例もありますので、何気にうまく整備が進む可能性もあるでしょうか。

    案2)被災地を復興しない

    これもすごい反発が予想されますが、一定の自然災害を受けた地域は、復興せず、他の地域に移ってもらいます。これには社会インフラの効率化以外にも以下の理由があります。

    理由1:災害は繰り返す

    日本は地震大国であり、災害としても地震を起因とする自然災害が一番多いです。1998年の阪神淡路大震災(犠牲者6,434人、被害額9.6兆円)、2011年の東日本大震災(死者行方不明者2万2318人、被害額16〜25兆円)、2007年の新潟県中越沖地震(死者15人、被害額1.5兆円)、2016年熊本地震(死者211人、被害額4.5兆円)で、これらは再現性があります。特に津波を伴う場合人的資本消失の被害は甚大です。三陸沖では、過去にも1611年の慶長三陸地震、1896年の明治三陸地震(三陸地震)と甚大な被害を受けています。感覚的に200年起こらないだろうではなく、200年後の子孫に対して、危険地域からは離れる選択があってもいいのではないでしょうか。

    地震の次に多いのは、台風・豪雨による水害、河川氾濫、土砂崩れなどです。河川氾濫、土砂崩れなどは、地震以上に再現性が高いです。熊本は地震に加え豪雨で球磨川がたびたび決壊しています。記憶に新しいのは2017年、2020年で、水没家屋は数千、死者も出ています。2017年の後に建て直して2020年に再度被災するという誰も得しない状況も実際起きています。これは偶然ではなく必然です。

    理由2:災害復旧コスト

    そしてこの手の復興には莫大なお金が必要です。東日本大震災の損失額は16兆円以上。個人の被災には一部支援金を出すのが慣例になっているのと、道路など公共の損害もあり、国自治体のダメージも相当大きいです。通常の予算では対応できず、利子課税、キャピタルゲイン課税に対して0.315%の上乗せがあり、この課税は13年経った今でも徴収されています。再び大きな地震被害があるたびに上乗せしていくのでしょうか?それもまた再現性がある天災に対して・・・

    これだけのお金を使うのであれば、せめて安全な地域、もしくは未だ被災者の選んだ新たな土地で、その方達が生活を始める予算として活用した方が有意義です。そして、これが非居住エリアの限定にも繋がります。人が意思決定する方法ではないので、これはある意味フェアとも言えます。

    有事のショックを緩和するために

    当事者になったときのことを考えると「まさに泣きっ面に蜂」、災害で被災して自身の資産を失った上に移動しなければいけなくなる・・・特に地場のコミュニティ・共助が有効に機能しているような地域の人々は新たな土地でどう生活を組み立てるか・・・

    その方法の一つとしては、事前に自治体ごと、集落ごと、もしくは個人において、有事の際の移動先をあらかじめ設定しておくことでしょう。その地に立地する法人においても同様の設定は必要で、就業者を伴う場合にはその集団で移動先を選択する方法もあるかと思います。東日本大震災の時には、集団移転は実際行われています。こうした準備を予め行なっておくことで、有事の際のショックを緩和できるかと思います。もともと災害可能性の高い日本/地域に居住する際には、田舎・都市部に関わらず、全ての人がこうした災害時のコンティンジェンシーを考えておくべきとも言えます。

    まとめ

    人口減少時代において、持続可能な社会インフラに向けて、居住地、非居住地を線引きし、人口減少に合わせて、サービス提供エリアを減らしていく必要があります。

    地方交通は赤字で困窮、水道、道路も漏水、劣化でメンテナンスの時期にきており、固定費の圧縮が急務です。そのためには、一部の共同体メンバーに本人の希望に反する形で移動をお願いする必要が出てきます。

    そうした難しい移動・移転に対して、中国では、国家第一で簡単に進めらますが、日本では逆に個人の権利が強すぎ、成田空港整備ですら30年経っても用地買収出来ませんでした。中国の方法は極端としてもあまりにもへなちょこ過ぎです。そんな環境の中でどう進めていくか、現制度からの土地用途地域への人口密度要素での拡張を行います。そして、人口密度を下回った地域にはサービスを停止します。加えて極端ですが、被災地復旧をしないという方法は、再現性を考慮しての国民の安全、投下予算を無駄にしない点でも有効かと思います。

    他にも良いアイデアがあれば教えてください。

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