少子化は解決可能な課題か?

人口政策
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課題:低出生率(=少子化)は、人口減少につながり、特に経済活動の低下、日本の活力低下につながる。また、高齢化を高め、社会保障制度の仕組み等にも影響する。
対策:育児支援金、学校の無償化など現在の少子化対策は、子供を持つ意思のある夫婦世帯には有効だが、婚姻率の低下、多様な生き方による子供を持たない選択など他の理由もあり全体としての課題認識が不十分。中には対応困難な理由もあり、まずは、真因分析から解決可能性の判断を行う必要がある。
ポイント:出生率の低下は、日本に限らず先進国で顕著で、全世界で見られる傾向。真因に鑑みると日本において人口置換水準まで回復させることはほぼ無理であり、長期視点では人口減少、高齢化社会を前提とした各種政策に見直す必要がある。

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課題と影響

現在の日本の多くの問題に影響している根本課題として、低出生率(=少子化)という課題があります。低出生率は、若年層の人口減少から高齢化につながります。また、若い人口が少ないということは、活力のある労働力が減少し、経済活動の減少、日本の活力減少につながります。

現時点では経済面においては資本主義が支配的であり、人口はその計測尺度であるGDPにもかなり密接な関係があります。人口減少はGDPの減少に直結します。(ただ、GDPが計測尺度として国の在り方を評価するベストな指標なのかは、別途検討が必要です。)

また、今の社会保障などの仕組みは、現在のような人口動態を想定しておらず、根本的な見直しが必要です。

ファクト

出世率の指標として合計特殊出生率(Total fertility rate:TFR)があります。男女の比率が1:1の場合、女性が生涯に2人の子供を産む場合で人口増減はほぼイーブンになります。実際には、その子供が子供を生む歳になるまでの自然死を考慮する必要があり、日本の場合、人口を減らさない値(人口置換水準)は2.07になります。この値を下回る場合人口減少となります。また、この値は医療などの充実度の影響を受け国により異なります。

世界銀行の国地域別のTFRを見ると、ニジェールがトップで6.75で、上位はアフリカ勢が占めます。先進国の中ではフランスが1.79(150位)、アメリカ1.66(170位)あたりが上位ですが、2.0を大きく下回っています。日本は1.26(247位)、最下位は香港で0.7(250位)です。

また、世界平均においても2.26ということでそれほど大きくなく、経年で低下傾向にあります。世界人口も現時点ではプラスですがいずれ逓減に向かうことになります。

出生率の低下は、日本に限った話ではなく世界的な傾向で、特にその傾向は成熟社会において大きいということです。

※ 2024.6参照値。統計値は公表団体により異なるので注意

本来生物としては増え続けるはずであるが・・・

本来生物は(その先に何があるのかは分かりませんが)、遺伝子を継承し種を存続させることが本能としてインプットされています。それが全ての生物に共通する唯一の活動と言っても過言ではありません。人類においては、他の動物との競争の中で、道具を使用することを覚え圧倒し、農業畜産により食料を蓄積し、貨幣経済により流通革命を起こし、産業革命により生産性を向上、医学の発達で死亡率を削減、生存できるキャパを増やし、実際人口を大幅に増やしてきました。

ところがキャパは十分確保できているはずなのに、先のファクトからは今後減少傾向を辿るという非常に不思議な現象が見受けられます。この意味は、地球という1つの独立した生態系の中である種のバランスを取ろうとする自浄作用とも見受けられ哲学的ともいえ大変興味深いです。

真因は何か?

という課題に対し、私自身、About Meで記載の通り絶賛子なし世帯で、生物の唯一の目的を果たさないという生物の本能を超越した決定を行いました(大袈裟)。そこに至った現状を分析してみたいと思います。

私自身のケース

33歳の時、住宅を購入し住環境を改善するタイミングで結婚しましたが、それに先立ち、人生プランについて夫婦間で話し合いました。当時から、興味のある分野に振ったステレオタイプではない人生(Extreme Life)を歩む方向で子なしという選択を提案しましたが、妻から反対はなくその方向で合意しました。

こうした方向は先天的なものなのか、後天的なものなのか、子供を持ちたいと思ったことは今までないですが、潜在意識の中で相対的な選択している、子供を持ちたい欲求を黙殺しているもゼロではないため、改めてその点を振り返ってみました。

仮説1:まだ成熟していない

一番最初に疑うべきは、親としての責任を果たすまでの精神的な成熟に至っていないということが考えられますが、現時点で40台後半になっていますのでもしこれであればこの先もないでしょう。

ただ1つ関連しそうなのは育った環境があります。従兄弟なども年上が多く、自身の生育環境は、グループの中で常に年少者ポジションであったという点は少なからず影響しているかもしれません。高度経済成長後は急激に核家族化が進み、周囲に子供、年少者が少ない/いない中で育つケースは増えています。もしこうした生育環境が影響しているならば、社会コミュニティのあり方が原因と言えるかもしれません。

仮説2:多様なライフスタイルの追求

これが有力と思っていますが、会社の先輩などのライフスタイルの影響を受けている可能性があります。子供の有無で旅行の頻度、外食、遊びなどの自由度に違いがあることを認識しました。現在では、周囲の人間関係に限らず、インターネットなどを通し多様な生き方に接することができます。また、エンターテイメントの充実などで、時間の使い方も多様化し、かつての「大人になったら子育て」というステレオタイプ以外の生き方が選択されやすくなっています

男女平等が謳われ、女性の社会進出の機会が増えたことは、キャリアの追求から子供を持たない女性が増えているという流れもあります。(出産のための一時的な離脱も同期からのビハインドになり出世競争から出遅れるケースもあるようです)

仮説3:ムラ社会の消失

昔はステレオタイプな生き方がありました。本人の思いがどうであれ、一定の年齢になれば結婚し(させられ)、子供を持つことが当然という潮流がありました。

良し悪しは置いといて、このステレオタイプの生き方を外部から強要することは一定の出生率を維持する点では有効といえます。子供好き/嫌いは持つ前後でガラリと変わるとも言われています。子供を欲しいと思わない人でも実際に子供が産まれれば子煩悩になり一生懸命育てるという話も聞きます。もしこれを立証できるのであれば、本人の嗜好に関わらず半強制することが本人にとっても有意義ともいえます。

産業の成熟により家族・地域の助けがなくても生きられ、そうした干渉がなくなったことが多様な生き方を認めることに繋がったのであれば、このケースもまた社会コミュニティの希薄化が影響しているといえます。

その他要因

私自身のケースでは、先天的以外には仮説1〜3が当てはまる可能性があります。特に可能性が高いのは2です、この選択は世の中的にもかなり多いかと思います

さらに、上記以外のケースも存在します。特に「子供を持ちたいと思っているがそれが叶わないケース」などです。

仮説4:未婚化の影響

多様な生き方が認められる中で未婚化も進んでいます。一般的には(結果的に破綻することはあっても)子供は婚姻のもとで育てることが基本とされます。グラフは女性の年齢別未婚率の推移になります。子供を持つ前提となる婚姻率が減少していることは、出生率の低下に少なからず影響していると考えられます。

資料:年齢別未婚率については総務省統計局「国勢調査」、生涯未婚率については国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」

出産を考えた場合、40歳前後には婚姻が成立している必要があります。35〜39歳の未婚率は、高度経済成長期の1970年に5.8%だったのが、23%まで大幅に上昇しています。→ 子供を持つ前提が94.2% → 76.9%と、18%弱低下しています。これは結構大きなインパクトです。

東京都はこの社会構造の変化に気づき対策としてマッチングアプリを提供しています。

仮説5:経済的な理由

仮説2と見分けがつきにくいですが、結婚しており子供を持ちたいと思っているが、子供を育てる経済的な環境が整わずに踏み切れないケースにあります。

特に若年層の世帯所得の伸び悩み、共働き世帯の増加、加えて、地域の共助の消失から働いている間の育児環境の確保・そのコストなどが直接的な理由となります。また、労働の複雑化の中での自身の経験から、高度な教育の必要性を感じ、その分、量より質にシフトする(子供の数を減らし英才教育する)傾向が見受けられます。家族の人数の増加による広い住居、食費の増加とともに、高度な教育に関する追加コストが大きくなります。

仮説6:不妊

こちらも婚姻は成立しており子供を持ちたいという意思も揃っている状態ですが授かれないというケースです。医学の発達により解消できるケースも増えているようですが、自由診療で高額な費用が伴うケースもあるようです。

仮説7:働き手としての子供の消失

過去の出生率との比較として、働き手目的で子供を多く儲けていたが、その採算が合わなくなり減少したケースです。途上国での出生率の高さにはこれがモチベーションになっている可能性が高いです。

単純肉体労働が、生活向上と強い相観がある場合、世帯の働き手を増やすことが生活向上への手段になりえます。一方で、成熟社会においては、サービス業など直接的な生産でない、単純でない労働が中心となり、頭数の多さが必ずしも生活向上につながらなくなると推察されます。また、育てるコストが大きくなり、先行投資が大きくなる点も戦略として取りにくくなっている一因といえます。この点も量より質の傾向変化にあたるでしょう。

対策

それら仮説への対策可否、対策内容をまとめると以下のようになります。割合はとりあえず独断と偏見で仮置きです。子供を持つモチベーションがあり、対策が可能なのは、仮説5、6(+4)で、それ以外は現実的に困難です。対応できる範囲は精々30〜40%程度で、60〜70%は対応困難と推察されます。

No 仮説 モチベーション 割合 対策可否 対策内容
1 成熟・生育環境 ○半強制 10% × 社会コミュニティの復活、干渉は一定の効果あるが再構築は困難。
2 多様な生き方 × 40% × 子供の良さを伝えることから???効果不明、多分私には響かない
3 ムラ社会 ○半強制 10% × 社会コミュニティの復活、干渉は一定の効果あるが再構築は困難。地方では一部残存?
4 結婚希望者の未婚 ○/× 10% 結婚促進は必ずしも子供につながらない。社会コミュニティの復活、お見合い、干渉は一定の効果があるが再構築は困難
5 経済的理由 20% 経済支援
6 不妊 10% 医療費支援
7 働き手としての子 0% × 成熟社会ではこのモデルは成立しない

高度経済成長期の人口増(1970年、出生率2.13)は、外とつながる機会に制限があり、結婚相手も見合いで見つけ、娯楽もろくになく、外野のチャチャ入れで子育てをする時代の恩恵だったのかと思います。教育などのコストもそれほどかからず、ともすれば労働力として生活向上の手段としても考えられました。

では、今からそうしたライフスタイル、社会コミュニティに再び戻ることができるのか?それを望むのか?蜜な社会コミュニティは、一方でドロドロの人間関係で面倒くささもセットです。産業が効率化され、地域社会に依存せずとも生活でき、情報の氾濫で様々な生き方を知ってしまった私たちは戻ることはできるでしょうか。その方法以外再び出生率2.07を超えることは不可能でしょう。

また、この少子化は全世界的な動きです。世界人口が減少に転じることも予測されています。「結婚して子供を作るのが当たり前」な世界は終わりました。この結果人類が滅ぶのであれば、これはこれで一つの種の選択なのでしょう。

大きな流れは以上ですが、仮説(4+)5〜6に対しては少なからず対応が可能です。減少幅を遅らせることは相対的な各国間の競争の面では価値があるでしょう。ただコストパフォーマンスとの兼ね合いで判断すべきです。人口減少以外にも課題は山積みで、どこにどれだけ割り振れば全体としての価値の最大化(価値減少の最小化)ができるのか見極めが必要です。

補足

先進国で合計特殊出生率 2.0キープはイスラエルのみ

イスラエルはユダヤ人の単一民族国家で、ユダヤ教の選民主義思想と過去居住地を追われ、ジェノサイドを受けたバックグラウンドから特に民族の生存に強い執着があります。イスラエルのハマスとの衝突における執拗なまでの攻撃はこの危機感の現れともいえます。この国・民族の団結を、平和ボケしている日本が真似ることは不可能です(平和ボケしていられのはある意味幸せなことです)。他の国・民族も難しいでしょう。可能性があるとすれば中国ですが、多民族国家で民族間での軋轢があり、団結はイスラエルほど強くないかと思います。

この民族主義、ユダヤの話題は<別途>機会があれば。

移民政策は?

人口減少に対しての対応としては移民受け入れという手段も有効です。ただ、全世界的に人口減少が進むことが予想されており、恒久的な解決策にはなりません。世界的にボーダーレスが進む中で、日本は、信仰、文化、言語、民族として固有な状態として残っています。移民を人口減少を解消するほど大幅に増やす場合、そうした文化の希薄化、不可逆なミックス(元に戻せない)が進む可能性があり、プロコンをしっかり評価する必要があるでしょう。

今後、経済活動はAI、ロボットの置き換えが進む

出生率の低下 → 人口の減少で一番大きな影響は経済活動の担い手です。その点においては今後、AI、ロボットへの置き換えが進みます。すでに飲食店のワンオペ、無人レジ、チャットbotによる問い合わせ対応、コピー機での行政文書発行など、生活の中で徐々に代替を目にしていると思います。今後一層の置き換えが進み、究極的には、衣食住にまつわるほとんどの部分が無人化されるでしょう。

そうした社会においては人間は労働から解放されます。生活インフラは、AI、ロボットが行い、ごく少数の管理者で回せるようになります。これは社会主義の計画経済に近いところではありますが、怠けない、疲れ知らず、不平不満を言わないAI、ロボットが行うことに違いがありますコントロール自体もAIが最適化するため腐敗の排除も可能でしょう。生きていく上で必要となる資源、娯楽は無償で提供されるか、個人の選択を用意する場合で、価値交換として依然としてお金が使われている場合は、ベーシックインカムが導入されているでしょう。

そうした社会で人間が生きる意味は何か?幸せか?は、興味深いですが、人口減少に起因した現在直面している課題の多くは課題でなくなります

であれば、人口減少は受け入れ、AI、ロボットへの置き換え、そうした社会への移行プランにもっと時間を割く方が有意義かもしれません。そうした社会では人間の生活は暇になり、経済的な課題も解決し再度繁殖が進むかもしれません。それでも人口減少が進み人類が滅亡するのであればそれはそれで・・・

命に強い執着があるわけではありませんが、この結果は是非知りたいところです。

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